「ぬい活」ブーム拡大中 ぬいぐるみと一緒に過ごす“癒やしの新日常”

「ぬい活」ブーム拡大中 ぬいぐるみと一緒に過ごす“癒やしの新日常”

街中やカフェ、美術館、さらには旅行先などで、小さなぬいぐるみを大切そうに抱える人の姿が目立つようになった。SNSを中心に人気が高まるこの現象は「ぬい活」(ぬいぐるみ活動)と呼ばれ、コロナ禍以降の“心の支え”として静かな広がりを見せている。

SNSから生まれた“癒やし文化”

InstagramやX(旧Twitter)には、ぬいぐるみを連れて出かける写真が数多く投稿されている。お気に入りのぬいぐるみに小さな帽子やバッグをつけ、観光地やカフェのテーブルで一緒に写る。そこには、まるで友達と過ごしているかのような温かい空気が漂う。

東京在住の20代会社員、佐藤美咲さん(仮名)は、「仕事で疲れたとき、ぬいぐるみを連れて外出すると安心するんです」と語る。週末には必ずお気に入りのクマの“モコちゃん”とカフェ巡りをするのが日課だという。「誰かと一緒にいる気分になるし、写真を撮ってSNSにアップすると同じ趣味の人たちとつながれるのも楽しい」と笑顔を見せた。

コロナ禍で加速した「癒やし需要」

心理学者の間でも、「ぬい活」は社会変化によって生まれた自然な心の反応とされる。東京大学心理学研究所の石井教授は、「人との接触が制限されたコロナ禍をきっかけに、自分に安心感を与える存在を求める傾向が強まった」と分析する。ぬいぐるみは幼少期の思い出と安心感を再び呼び起こし、ストレスを和らげる効果があるという。

さらに、SNSでは「ぬい撮り」という言葉が定着するほど、写真を通じた自己表現の手段にもなっている。お気に入りのぬいぐるみと共に撮る写真は、「日常の小さな幸せ」を共有する新しい交流の形として若者に支持されている。

経済や観光にも波及効果

このブームは、観光業界やキャラクターグッズ産業にも影響を与えている。京都や鎌倉などの観光地では、「ぬいぐるみ撮影スポット」や「ぬい旅プラン」を提供するホテルが登場した。宿泊客がぬいぐるみを持参すると、小さなベッドシーツや撮影セットを用意してくれるという。

また、大手百貨店では「ぬいぐるみ専用の洋服」や「ぬいバッグ」といった関連グッズの売上が急増。あるメーカー担当者は「大人のための“かわいい文化”が再評価されており、ぬい活は一時的な流行ではなく、新しいライフスタイルとして定着しつつある」と話す。

自分を大切にする 行動として

ぬいぐるみを持ち歩く行為は、一見すると子どもっぽく見えるかもしれない。だが、ぬい活をする人々にとって、それは「自分を大切にする」ための時間でもある。現代社会の中で、他人との比較や競争に疲れた人たちが、自分だけの安心を求めて見つけた小さな幸せの形なのだ。

あるぬい活愛好会のメンバーは、「ぬいぐるみは話を聞いてくれる友達のような存在。誰かに見せるためではなく、自分の心がほっとするから持ち歩いている」と語る。

Zozo
Author: Admin Z

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