米国の人権団体フリーダムハウスが発表した「Freedom on the Net 2024」報告書によると、世界のインターネットの自由度が14年連続で低下していることが明らかになった。特に中国の状況が悪化し、ミャンマーと並んで世界最低の評価となった一方、台湾と日本はアジアで最も自由なインターネット環境を維持していることが分かった。
報告書は72カ国のインターネットの自由度を調査し、世界のインターネットユーザーの約87%をカバーしている。100点満点で各国を評価し、アクセスの障害、コンテンツの制限、ユーザーの権利侵害の3つの分野で21の指標を用いて採点している。
中国のインターネットの自由度が急激に悪化
中国は10年ぶりに単独で最低評価を免れたものの、ミャンマーと並んで世界最悪のインターネット環境という不名誉な称号を共有することとなった。中国政府は国内のインターネットを世界から隔離する努力を続けており、一部の政府ウェブサイトへの国際トラフィックをブロックし、VPN(仮想プライベートネットワーク)の使用に対して巨額の罰金を科している。
また、中国政府は組織的に反体制的な意見を抑圧し続けている。その一例として、2023年11月に活動家でジャーナリストの孫林氏が、習近平国家主席に対する抗議活動についてソーシャルメディアに投稿したことへの明らかな報復として警察に殴打され、死亡した事件が挙げられる。この事件に関するオンライン上の議論は徹底的に検閲された。
中国では、政治的、社会的、宗教的な表現をオンラインで行ったことによる逮捕、ウェブサイトのブロッキング、ソーシャルメディアプラットフォームへのアクセス制限、インターネットや携帯電話ネットワークの切断など、あらゆる形態のインターネット規制が行われている。
台湾と日本、アジアで最も自由なインターネット環境を維持
一方、台湾と日本はアジア地域で最も自由なインターネット環境を維持していることが明らかになった。両国は表現の自由、プライバシー、情報へのアクセスを保護する強力な法的枠組みを持っており、政府による過度の規制や検閲がほとんど行われていない。
台湾は特に、選挙期間中の情報の完全性を保護するための取り組みが評価された。台湾当局は、事実確認イニシアチブやデジタルリテラシープログラムを支援し、選挙運動における生成AIの使用を制限するガイドラインを導入するなど、バランスの取れたアプローチを採用している。これらの取り組みは、透明性、市民社会の専門知識、民主的な監視、国際人権基準を優先しており、インターネットの自由を損なうことなく情報の完全性を保護するモデルとなっている。
日本も同様に、オープンで自由なインターネット環境を維持している。政府による過度の規制は少なく、表現の自由やプライバシーの権利が尊重されている。しかし、一部のオンラインコンテンツ規制法や、デジタルプラットフォームに対する政府の圧力の増加など、懸念される動きもあることが指摘されている。
世界ランキングの概要
「Freedom on the Net 2024」の世界ランキングでは、アイスランドが最も自由なオンライン環境を維持し、トップの座を守った。エストニア、カナダ、チリが僅差で続いている。
上位10カ国は以下の通り:
- アイスランド
- エストニア
- カナダ(同率3位)
- チリ(同率3位)
- コスタリカ
- オランダ
- アイルランド
- ドイツ
- 英国
- 日本
一方、最下位の国々は以下の通り:
- 中国(同率最下位)
- ミャンマー(同率最下位)
- イラン
- ベトナム
- キューバ
全体的な傾向として、72カ国中27カ国でインターネットの自由度が低下し、18カ国で改善が見られた。最も大きな低下を示したのはキルギスで、サディル・ジャパロフ大統領がデジタルメディアを沈黙させ、オンラインでの組織化を抑圧する取り組みを強化したことが原因とされている。
一方、最も大きな改善を示したのはザンビアで、オンライン活動のための空間が開かれたことが評価された。
選挙と情報操作
報告書は、選挙期間中の情報操作と検閲に特に注目している。全国選挙を実施または準備した41カ国のうち、少なくとも25カ国で有権者が検閲された情報空間に直面した。多くの国で、技術的な検閲が野党の有権者へのリーチを制限し、信頼できる報道へのアクセスを減少させ、投票の不正に関する懸念を抑え込むために使用された。
また、少なくとも21カ国で、政府寄りのコメンテーターがオンライン情報を操作し、多くの場合、選挙結果の完全性に対する疑念を煽り、民主的制度に対する長期的な不信感を植え付けようとした。
さらに、政府の干渉や主要ソーシャルメディアプラットフォームの透明性メカニズムの低下により、独立した研究者やメディアグループが選挙関連の影響工作を明らかにする取り組みが萎縮した。
対策と今後の課題
報告書は、信頼できるオンライン環境を構築するには、インターネットの自由に対する新たな持続的なコミットメントが必要だと指摘している。高品質で信頼性が高く多様な情報空間へのアクセスの欠如は、人々が自分の意見を形成し表現する能力、コミュニティに生産的に関与する能力、政府や企業の説明責任を求める能力を妨げている。
情報の完全性を保護するための政策介入は、表現の自由やその他の基本的権利に根ざしている限り、オンライン環境への信頼を構築するのに役立つ可能性がある。しかし、これらの原則を取り入れない対応は、インターネットの自由と民主主義のより広範な衰退を加速させるだけだと警告している。
フリーダムハウスは、各国政府や技術企業に対し、インターネットの自由を保護し、信頼できるオンライン環境を構築するための具体的な政策提言を行っている。これには、表現の自由の保護、プライバシーとデータ保護の強化、デジタルリテラシーの促進、透明性の向上などが含まれる。
結論として、「Freedom on the Net 2024」報告書は、世界のインターネットの自由が危機に瀕していることを明確に示している。中国のような権威主義国家がオンライン空間を厳しく統制する一方で、台湾や日本のような民主主義国家は自由なインターネット環境を維持するモデルを提供している。しかし、世界的な傾向としては依然として後退が続いており、インターネットの自由を守るための継続的な努力と警戒が必要であることを報告書は強調している。(News Timesによるレポート)
Citations:
Funk, Vesteinsson, Baker, Brody, Grothe, Agarwal, Barak, Loldj, Masinsin, Sutterlin eds. Freedom on the Net 2024, Freedom House, 2024, freedomonthenet.org.